西暦2003年8月27日、我々の住む地球と、すぐ外側を回っている太陽系第4惑星の火星が超大接近した。6万年振りと云われる其の距離は5,567万km。地球一周が4万km、月までが38万kmと頭では理解していても実感できない、所謂、天文学的数字の世界である。まだ、「裏磐梯は東京よりも標高が850m高いので、その分、火星に近くて大きく見えます。」という、戯言の方が信用されてしまうのかも知れない。
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超大接近の晩に観察会を催した。東から昇ってきた火星は、位置を説明する必要が無いほど肉眼でも真っ赤で明るかった。用意したのは口径10cmの屈折望遠鏡だったが、大気の状態が安定していた事にも救われ、その赤い大地と黒い模様、白く光る南極冠をはっきりと確認出来た。参加者も、一生に一度のチャンスとあって何度も列に並び直しながら望遠鏡を覗いていた。「こういった世紀的な天体ショーが数多くあったならば、人間はもっと、空を見上げるようになるのになぁ。」と思わずには居られなかった。
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古来より、火星は「軍(いくさ)の神」と崇められてきた。禍禍しい迄の赤さ故に、血や戦火の象徴とされた事は想像に難くない。大接近する毎に世の不吉な現象と結び付けられた事であろう。 また、古代ローマでは「農業の神」と見なされていた事もあったらしい。ただし、この頃は「たたり神」等の災いをもたらす対象を鎮める信仰も存在した為、火星の大接近と凶作を関連付けていたのかも知れない。
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ここだけの話にしたいのだが、今年の冷夏は火星も片棒を担いでいるのではないだろうか?主原因は当然の事ながら、我々、人間による大気汚染や熱放出なのだが、南極のオゾンホールが拡大した事や、悪天候が続く事など、超大接近した火星の重力が及ぼす影響と考えられなくも無いのである。願わくば、次に火星が超大接近する284年後まで、冷夏も凶作も無しにして欲しいものだ。裏磐梯のホップの花が立ち枯れしてしまうと、自慢の美味しい地ビール「オー!ラガー」が呑めなくなってしまうのである。
ともあれ、「火の星」は10月下旬頃までの夜半に「火の山」の上、水瓶座の中で煌煌と輝いている。
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アストロ・アーツ 火星大特集
みちのく福島路ビール
写真・文 木村郁夫 ( 裏磐梯の文豪・・・でなく酒豪。)
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