Cameratchi News
 Vol 5
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2007・5・ 3 記載
Seiya Yamauchi

天司のケヤキ

 わが家のすぐ近くに「天司のケヤキ」という大ケヤキがある。
地元の言い伝えではキリシタン信仰と関係があり、礼拝堂があった所らしい。
また平成元年の環境庁の巨木調査で、山形県の東根小学校校庭にある日本一のケヤキについで二番目の巨木に登録された。そのためか、各地の巨木ファンがときどき訪ねてくる。数人でゾロゾロわが家の前をカメラを持って歩いて行くのを見るとたいがいは巨木ファンなのだった。

福島県緑の文化財にも指定されているが、それらしい立て札もなく、民家の裏庭にひっそりと在って、町の人々にもなんだか忘れられているようだ。
数年前友人の赤沼カメラマンがそのケヤキを撮影に来た。
その写真は彼自身が企画したムック本「会津」(歴史春秋社)に載ったが、原稿を依頼されて執筆された小堀千明氏の記事は会津のキリシタンを研究する専門家ならではの、たいへん興味深い内容だった。

要約すれば、この場所は猪苗代城の外堀の内にあって、侍たちの礼拝堂であった。キリシタン大名の蒲生氏郷が建てた会津鶴ケ城の天守閣や御三階と同じ方位102度と282±3度の線にあり、エルサレムに向けて建てたものと考えられる。「枯れ葉を切っても祟りがある」との言い伝えは隠れキリシタンたちが、あの場所を残すために意図的に言いふらしたものであり、そのために400年を経てなお礼拝堂の基礎部分が残り、祈りが受け継がれた証であると。

樹勢はかなり衰え、雷に打たれてか、大半が黒く削がれている。隣家のO夫人が荒れ果てて、雑草だらけになるのを心配し、水仙や紫陽花などの花々を周りに植えて見学者の目を癒している。時々は見学者に「会津」誌のページ・コピーを差し上げる事もあるらしい。

そろそろ新緑の季節になる。この時ばかりは「天司のケヤキ」も瑞々しい葉っぱを勢いよく広げて、にわかに元気がみなぎるように見える。

写真と文 山内晴也 
( ギャラリーのムジナもたまにお山へ帰る)


天司のケヤキ全景
石像
礼拝堂の基礎石積み
周囲の花々
天司のケヤキと子供たち
Photo
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