Buna Buna  Vol 6 Photo Photo Photo Photo
2006・11・ 6 記載
Yasuo Inoue

くず鉄なんかにするものか

今年の春のこと。
自転車置き場のすみっこに、埃をかぶり、蜘蛛の巣だらけで、メーターもナンバーもない一台のオートバイ。
「いらなくなったオートバイ、自転車などございましたら…」スピーカー付きの軽トラックが近くを周っている。今、屑鉄が高いそうだ。こいつが走るのをやめて十年以上経つだろうか。思えば、二十代から四十代まで七台ものバイクを乗り継いだ。最後まで残っていたのがこいつだ。
 娘が五歳くらいの頃、私と一緒にこいつに跨って撮った写真がある。1984年。22年も前。猪苗代に来て早、17年。今も、ここに、こいつが在ることに急に胸が熱くなった。
 書類はおろか、廃車証明もない。幸い、廃車した日のメモや領収書が残っていた。練馬の陸運に電話をしてみた。何度かの問い合わせに廃車証明の再発行をしてくれそうだった。東京に行った。
 そして今。秋元湖レイクラインのワインディングロードを古ぼけたトライアルバイクが疾走する。リーンイン、リーンウイズと快適なターンを繰り返す、あの感覚は忘れていなかった。戻ったぞ。戻ってきたぞ。
 9月のこと。中津川で2メートルほどのサビサビの古いレールを見つけた。
 雪が降る前に回収したい。さて、どこに置いて来たか。とりあえず探し、拾い上げておかねばと、こいつを走らせている。川は夏の時より水嵩を増していた。が、それは川原に待っていたかのように横たわっていた。しかし、こんなもの拾ってどうするんだ?わからない。とにかく拾っとけと天の声。逆らわず応じるだけだ。
 その昔、森林鉄道や鉱山鉄道があった。ものや人を運んだ。トロッコ。軽便。旅の楽しさには、食べ物、人情、そして乗り物。特に鉄道は想い出にいつまでも残る。
 置いてきてしまったもの、忘れかけているものを想い、夢の続きを追いかける。身近なものから手におえないものまで。さぁて、このサビサビレールはこれからどんな展開を見せるのだろう。
 娘が帰省したらバイクに跨らせて写真を撮ろう。本人は幼き日の事を思い出すだろうか。

写真と文  井上康夫
( 通称「やっちゃん」。自称、ブナブナ教の教祖。)

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