Iide night&day Vol 2 Photo Photo Photo Photo
2006・8・ 22記載
Akira Monoe

飯豊の花


会津に梅雨明けと同時に暑い夏がやって来た。
今年の梅雨は、過去最高の降雨量と最低の日照時間をもたらし、多くの爪跡を各地に残し過ぎて行った。

7月は雨にたたられ飯豊に行く事が出来ずに悶々とした日々を送る事となった、しかし7月の天候不順以前は比較的好天に恵まれ、例年になく飯豊に登る事が出来た、私は飯豊の山々と花々に魅せられ数え切れない程、足を運んでいる。6月、7月中旬までの飯豊は入山する人は少なく、この山本来の
静けさと美しさを楽しむ事が出来る。この時期の 残雪と花々 それは、飯豊の一番美しい姿だと私は思う。

2006年、6月25日から3日間をかけ山都より大日岳往復計画。例年にない多い残雪が心配になる、会津から見上げる飯豊は例年になく雪が目立つ。半月前、梶川尾根を登った時は登山道に残る雪の多さに驚かされた。

6月25日、登山1日目。小白布沢沿いの登山口には工事の為、車で入る事が出来ず、御沢より登る
事となった、駐車場には10台程の車がある、この時期としては多い気がする。中高年の登山ブームはひとまず落ち着いた様な気がするが8割以上は中高年だ、もっとも私も47歳でその中の一人かもしれない。剣が峰の取り付きまでのブナの森はブヨとの壮絶な戦いが待っていた、少しでも動きを止めたなら容赦なく肌を刺す、虫除けなんていくら塗ってもたちまち汗で流れてしまい効き目は無い。三国岳に登ればブヨとさよなら、花を眺めながらの登山となる、切合小屋でおにぎりを食べ、いよいよ本格的な飯豊が楽しめる、残雪に美しい花々、本山小屋16時到着。夕方ガスが上がり大日岳が私を迎えてくれる。

登山2日目。朝から晴れ間が見える。梅雨の時期にこの天気は嬉しくなってしまう“飯豊が微笑んでくれた”そんなことを思う。この日の大日岳往復は天上の散歩道をひたすら歩く。稜線上には巨大な雪渓が横たわり涼しい風が心地いい。この大きな残雪は万年雪で会津の人々は 御鏡雪(みかがみゆき)と呼ぶ、この雪が南斜面に残ることで飯豊の雪がどれ程のものかを、うかがい知る事が出来る。  
御西小屋は昨年新築されドアをあけると真新しい杉の香りが充満していた、トイレも水洗でピカピカだった。
小屋を後に南向きの斜面を下り始めるとそこには “天上の楽園”が広がっていた。チングルマ、ハクサンコザクラ、ハクサンイチゲが今を盛りに咲き競う。生まれたての新緑がキラキラ輝き美しい花々に彩りを添える。柔らかな初夏の光は純白の花びらを透かし優しい風が吹き抜ける。こんな景色に出会うため飯豊に登り続けているのだろう。そんなことをつくづく思う。
文平の池は雪に覆われ池が現われるまでは今しばらくかかりそうだ。大日岳山頂下の雪渓は心配したほどの量はなく案外簡単に登ることが出来た。大日岳山頂を踏むのは随分久しい気がする。山頂の風の当たらない所で景色を眺めパンをかじる。険しい尾根と長く伸びる飯豊の主稜線、つくづく見渡すと大きな山だと実感できる。やっぱり来て良かったと心から思える。

登山3日目。未明に降り出した雨は下山準備を終えてもやむ気配はなく風も強まる一方だ。雨具を着込み小屋を出る。前日の景色が夢の様なそんな白い光景がそこに広がる、御前坂は雨具のフードにバチバチ音を立て雨が当たる、御秘所を慎重に通過し姥地蔵を過ぎれば強風域はない、草履塚を過ぎ雪渓を注意深く下りる、以前ガスに巻かれ雪渓を下りすぎ、夏道を見失いとんでもない時間と体力を費やした苦い経験があるからだ。今回はあっけないほど簡単に夏道に上がり切合小屋に到着、だが種蒔山までは油断は禁物。視界を閉ざされればかなり夏道を見つけにくい大きな雪渓がある、ここは経験が何より役立つ。今回は一発で夏道に辿り着きまずは一安心、ガスが無ければ簡単なルートなのだが、ガスれば苦い思いが脳裏をよぎる。種蒔山道標は半分ほど頭を出し雪の中に埋もれていた。ここからは花を眺めながら三国小屋、雨も上がり雨具は要らない。2階に陣取り靴を脱ぎ餅入りラーメンで腹を満たし、剣が峰を下り熱烈なブヨの歓迎を受ける。汗臭い体はブヨの大好物らしい。

幾度と無く登り続けた飯豊。同じ景色にも同じ風にも二度と出会えないそんな気がする。この私の前に広がる飯豊は私にとって初めての景色で、そこに吹く風は私が初めて出会えた風に違いない。

写真と文  物江 章
( ・・・今日もごめんねと飯豊山詣で ・・・)

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