Forest Note  Vol 5 Photo Photo Photo Photo
2002・7・8 記載
Maki Takahashi

國廣さんのギョウジャニンニク
  裏磐梯にある休暇村磐梯高原では、夏休みにサブレンジャーというボランティアの人達が自然観察会をやっている。14年前、私はこの活動をしに初めて裏磐梯にやってきた。その時休暇村側で窓口になっていたのが高橋國廣さんだった。困った事があっても國廣さんに言えば、たちどころに解決した。大きな体、やさしい顔、私達は安心して活動できた。
 5年前、思い立って裏磐梯の住人になり、やがてガイド業に就いた私に「おまえは前からやってきてっから、応援してるから」と國廣さんが言った。他から来た私にとって、この言葉は大きな心の支えになった。
 國廣さんは大トラだったが、一度倒れてからはお酒は止められていた。差し入れの一升ビンの他に自分用のウーロン茶を持ってきて、いろんな話をしてくれた。地元生まれで山の好きな國廣さんの話はいつ聴いてもおもしろかった。
そんな話のひとつに「吾妻にはギョウジャニンニクがいっぱいあるんだ」というのがあった。ギョウジャニンニクと言えばアク抜きいらずで、ニンニクの風味のあるうまい山菜だ。北海道ではポピュラーだが、裏磐梯にはほとんど無い。一同目を輝かせて聞いた。後で吾妻に行った私は、もちろん例の場所を探したが、見つけられずに帰ってきた。
 昨年の冬、國廣さんが40代の若さで亡くなった。あの人ほど裏磐梯の先行きを考えていた人はなかった。大勢に惜しまれて逝ってしまった。
 この7月、吾妻に行くよ、と言ったらみんな「じゃあ國廣の言ってたギョウジャニンニクを見つけてこなきゃ」と言った。みんな國廣さんのことは忘れられないのだ。
 例の場所を今度はていねいに探した。小さな群れだが、ギョウジャニンニクは生えていた。育って間もない様なので大きめの葉を3枚だけもらってきた。大切に洗って水切りし、ざく切りにしてしょうゆに漬け、一晩おいた。エノキ茸と豚肉と一緒に炒めると、ギョウジャニンニクの風味がうつったしょうゆが全体にからまって、少量でも十分楽しめた。
 山菜をこれほどしみじみと食べることは、他にはないだろう。

 写真と文 高橋 真希    
    写真協力 S Y 
( 森のねえちゃんプロガイドとして小さな体で野山に出没中。)

吾妻山の鎌沼
吾妻の瞳、五色沼
ギョウジャニンニクの花
ギョウジャニンニクの葉っぱ
葉先のしずく
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