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2003・6・23記載
Maki Takahashi
西大テンに登ろう
なんともやりきれないことがあった。
こういう時は山のてっぺんへ行きたくなる。
晴れた。山の向こうの米沢や朝日連峰が見えるかもしれない。
裏磐梯の山々や湖もきれいだろう。「西大テンに登ろう。」
5月末、デコ平湿原は、終わりかけのミズバショウやリュウキンカ、
今を盛りのタムシバが咲いていた。新緑のブナ林を抜け、布滝へ下る。
滝をおおうサワグルミの木は、まだ葉が開いていなくて、明るい光が
差し込んでいる。水音を聴きながら、昼食をとった。
「Fさん、いよいよ登りです」
単独行が多い私にしては、めずらしく同行者あり。彼女はこの山、初めてだ。
布滝からの西大テンは、雪崩でくずれたような斜面の細道を、「落ちないように、落ちないように」慎重に登る。滝の上流の沢を何度か渉り終えると、オオシラビソの森の下は一面の残雪。赤布の印もなし。他の登山者の足跡も薄い。そして実に特徴のない、のっぺりした地形!
「こんなに雪があるとは、おもわなかったね」うーん、私はあると思ってた。しかし目印なしだとツライ。
「3時になっても、ピークに立てなければ、登った道を引き返しましょう」
ササヤブに突入して進退窮まらないように上方を見、木の周りの雪を踏み抜かないように足元を確認しつつ、「いかに楽に高度をかせぐか」ルートを探しながらの残雪登山。
「これって、スリリングね」
「うん、でもね、私いつも1人でこんなことやってるから、大丈夫ですよ」
幸い天候は安定している。
無理して、Fさんを危ない目に会わせるわけにはいかない。.だけど、できたらピークに連れてってあげたい。
「トラバースして、グランデコからのメインルートに行きましょう。冬に何度か来てて状況がわかるし、登山道の赤布もあるから」
右手へ右手へトラバースする。手がかりの現われない時間はとても長く感じる。
「Fさん、ここわかります!」
冬のツアーでよく出てくる、立ち木のない斜面。夏道の印も近いはずだ。
まもなく赤布があった。3時を15分過ぎていた。
「ここからピークまで、15分くらいですけど、行ってみますか?」
ピーク手前の小ピークで二人でお茶を飲んだ。よーし、あとはこっちのもんだ。
3時40分
「着いたー!」
「うれしいー」
そして無事下山。
「最後の湿原歩きが、ほっとするわね」
「ホント。」
登山の緊張がほぐれていった。
写真と文 高橋 真希
( 森のねえちゃんプロガイドとして小さな体で野山に出没中。)
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